ろと思い出があり、何度も出かけました。
最初はベトナムは怖そうな雰囲気のある共産国家という印象でしたが、あとに
なってからはとても素朴で正直な人が多かったというように思っています。
今回はそういう強い印象を感じた1つの体験について、書きたいと思います。
■当時の状況
当時はハノイ市内のホテルの部屋を長期契約して、割安な価格で借りていまし
た。そして来たばかりのまだ地の利のわからないわたしは、会社のドライバー
が毎日朝晩送り迎えをしてくれていました。
そして少しずつ街の道路地図や状況がわかってくると、いつか一人で探検して
みようと思うようになりました。
ハノイは非常に治安が良いため、夜になってからスナックやクラブに出かけ、
ゆっくりとお酒を飲んでから、タクシーで帰ってくるということができると聞いて
いたからです。
■単独行動
あるときの夜、会社の帰りに同僚と日本料理店に行き、いろいろと食べたあと
いよいよ行動を起こしました。同僚には少し街をぶらぶらしてから帰ると言って。
地図を片手に街をぶらぶらと歩き、ようやく目的の日本人スナックを見つける
ことができたので、中に入っていきました。実はその日は偵察が目的だったの
で、中に入ったらすぐにカウンターに座り、一杯飲みながら店内の様子をゆっ
くりと観察をしたわけです。そうです、情報収集です。
■タクシーでホテルへ
そして頃合いを見てタクシーを呼んでもらい、車に乗り込みました。
次回はもう1ステップ進めるぞ・・と心で誓いながら。
車に乗り込んで運転手に、
「 Hanoi Hotel please. 」
というと、
「 OK! 」
と言って走り出しました。
ずい分調子よく返事をしてくれたので、もしかして英語が話せるのかなと思い、
「 Do you speak English ? 」
と聞くと、あっさりと
「 No. 」
という返事。
こちらはベトナム語は「こんにちは」と「さようなら」しか話せないので、何かトラ
ブルがあると困るな・・と少し心配しながら、街の風景をしっかりと眺めていまし
た。
へんなところへ行かれたり、同じところを何度も通って高い料金を請求されて
も困るためです。
■料金の支払い
ところがそのような心配はまったく必要ありませんでした。あっさりとホテル前
に到着しました。ホッと安心しながら料金を払おうとして車のメーターを見ると、
「11」となっています。
ベトナムでは流通貨幣が「ドン」なのですが、「米ドル」もほとんどの場所で普通
に使うことができますので、いつも米ドルをもっていました。そしてタクシーの
メーターが「11」だったので、すぐに11米ドルと思ってその紙幣を運転手に渡
しました。
すると運転手は車を降りようとするわたしに、
「 Wait, Wait ! 」
と言って、1ドル紙幣1枚だけを取って、もう1枚の10ドル紙幣は返してきた
のです。
そのときは「良いのかな?」と思いながら「 Thank you. 」と行って部屋に戻
りました。次の日同僚にその話をしたら、実はそれで正しかったのです。
メーターの「11」はベトナム通貨「ドン」で「11,000ドン」の意味だったので
す。
円換算すると当時のレートで、 11,000×0.008=88円
「11」は「11,000ドン」の意味で、「88円」だったのです。
だから1米ドルだけを取り、残りを返してくれたのです。
わたしはその正直さに本当にびっくりしてしまいました!
そしてそのとき思いました。「中国では帰ってこないだろうな」・・と。