「こんなレストランなんか2度と来るか!!」
夕暮れの香港の、とあるレストランの入口の前で、大声で(心の中で)叫びま
した。
実は昨年の夏、結婚20周年記念ということで、妻と一緒に香港へ旅行に行っ
たときのことです。
今回は記念なんだから・・と言って、普段泊まれないペニンシュラホテルに宿
泊し、夕方にフランス料理を食べに行きました。もちろん随分前から予約はし
てありますし、服装などもブレザーに襟付きの鹿子シャツ、下はスラックスを
はいて意気揚々と向かいました。
そこにはレストランにつながる専用のエレベーターがあり、階に到着するとま
っすぐ入り口に向かって歩いていきました。
中に入ろうとするとスタッフがすぐにやってきて、
「いらっしゃいませ!」
と言いながら、わたしの全身を素早くチェック。
チラッと一目見てからすぐに言いました。
「お客様。申し訳ありませんが、その服装では当レストランには入ることがで
きません。」
「どうしてですか?」
「メールに書いてあったようにフォーマルな服装で来ましたけど」
「申し訳ございません。上の服装はよろしいのですが、靴がスポーツタイプの
ものですので、お入りいただくことができません」
「これはスポーツタイプに見えるけど、ちゃんとした革靴ですよ!」
「申し訳ございませんが、革靴でも色が白くてスポーツタイプに見えるものは
許可することができないのです」
・・・何度説明し、食い下がっても同じでした。
おそらく責任者にしっかりと言われており、自分の判断で許可することができ
なかったのでしょう。
夏休みの旅行に、高級レストランで妻においしい料理を食べさせようと、重た
いブレザーやスラックス、靴をこの1回のために持ってきたというのに・・。
「こんなレストランなんか2度と来るか!!」
・・でした。
妻はとても楽しみにしていただけに、ガッカリとした表情で途方に暮れた雰囲気
です。わたしの頭の中はマグマが渦巻いていたのですが、妻の顔を見て少しだ
け冷静になりました。
「よし、何とかしよう!」
と思い直し、1階のフロントへ行き、
「Excuse me. My name is ○○. Room No is △△.」
「I'd like to make a reservation for dinner at the French restaurant again.」
と言いました。すると係員は、
「Well, Mr.○○. You already have the reservation. What's the matter?」
と聞いてきたので、
「I couldn't go into there. Because the staff told me my shoes looks like sneaker so I can't.」
と説明。
係員は納得して詫びながら、再度1時間後の予約を取ってくれました。
それからはダッシュです。道路向かいにSOGOがありますので、急いで地下
道を渡り、店の中を探し回りました。夏場でしたのでほとんどの店に革靴は並
んでいません。それでも何とか店の人に聞いて、置いてある店を見つけました。
そして今度は「黒い革靴」を履いてホテルに戻り、同じエレベーターで上昇。
扉が開くとすぐにツカツカツカ・・とレストランの入り口へ。
絵に描いたように同じところから同じスタッフがやってきました。
わたしは
「How about this time ?」
と力んでいうと、そのスタッフは一言
「 Perfect! 」